旅と仕事と生き方についてのブログ

Following the path of least resistance

インドのニムラナで現地採用として働くとは

インドのニムラナで現地採用

 

いきなりですが、インドのニムラナ工業団地で、現地採用の雇用形態で転職を考えていて、ニムラナについての情報がネット上に少なくて困っている、という方はいませんか? 確率的には皆無かもしれませんが、今回はそんなレアな方に向けて発信します。

 

というのも、私自身日本でインドでの就活中に、ニムラナでの仕事のオファーをいただいたのですが、ネット上での情報が少なすぎて困った経験があったからです。

 

インドのどこで働くか、という選択は、その後のインド生活に、とても大きな影響を与えることになります。その差は天と地ほどです。(というのもインドに来てから知りました。)

 

というわけで、ニムラナで働くことになった場合に、どのような生活が待ち受けているのか、およそのイメージを少しでも持っていただければ、という思いを込めて記事にしてみました。 ただし、女性の視点で書かれていますので、男性の方には違和感がある部分もあるかもしれません。

 

 

いきなり結論 

結論的な話になってしまいますが、ニムラナという場所は、デリー、グルガオン、チェンナイ、バンガロールなどといったメジャーなインドの都市などと比較してはいけない場所です。(笑)

 

ニムラナで現地採用でそこそこハッピーに暮らしていける人は、以下のいずれか(もしくは複数)にあてはまるのではないかと思います。

 

―日系の製造業での仕事にチャレンジしてみたい。

―野生動物に囲まれて生きていたい。

―インドだったらどこでも構わない。

―工業団地という環境が嫌ではない。

―将来のキャリアアップにつながるならへき地でも構わない。

―身に着けたいスキルや資格試験などの勉強を、集中してできる環境に自分を追い込みたい。

―インドの田舎が好き。

 

逆に、そうでない場合、ニムラナに長期滞在するのは厳しいかもしれません。

 

とはいえ、上記を含め、記事内容はすべて私個人の主観が入っていることは否定できません。できるだけ客観的な情報をお伝えすることをミッションとしつつ、自分の体験に基づいた意見もかなり取り入れていますことをどうぞご了承ください。

(記事はニムラナ滞在期間である2018年5月末~2019年12月時点の情報・体験を基にしています。)

 

ニムラナってどこ? 

ニムラナ(Neemrana)は下の地図で黄色く色づけしたところで、ニューデリーからジャイプールに行く途中に通過する小さな村です。

ニムラナから大都市グルガオン(GurugramもしくはGurugaon)へは車で1時間半強、ニューデリーへは約2時間の場所にあります。

ぎりぎりジャイプールの日帰り観光も可能な距離です。

ニューデリーやグルガオンの街はかなり渋滞しますが、それ以外は簡単な直線コースで比較的スムーズに移動できます。

ただし、日本と異なるのは、クラクションの嵐、逆走車あり、いきなり牛が飛び出てきて急ブレーキ、大型トラックの大群に囲まれての運転、常に道中に事故車や横転したトラックを見かける、など心をかき乱すシーンが多数ありますので、海外旅行保険は必須です。

 

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ニムラナの位置

 

ニムラナには何があるの? 

特記すべきものは、ニムラナ・フォート・パレス(Neemrana Fort-Palace)です。15世紀に建てられた宮殿で、今はリゾートホテルとしてとても人気があります。またそのすぐ近くにはインド名物の階段井戸があり圧巻です。

 

 それ以外には、

―日系工業団地

―ニムラナのダウンタウン的なニムラナマーケット(たいていの日用品や食料品はここで揃うそうです。)

―牛、やぎ、ラクダ、などの家畜の群れ

 くらいでしょうか。

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ニムラナ・フォート・パレス(Neemrana Fort-Palace)

 

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階段井戸

 

ニムラナの治安は?

体感的には、社有車で移動をしている限り、危険な目にあう確率は低い、と思います。

ただし、ニムラナ内を徒歩や自転車で移動した日本人が強盗の被害にあったという話は聞いたことがあります。

 

ニムラナではどんな仕事があるの? 

現地採用の場合は、基本的にはメーカーの日系企業で日本人の駐在員を補佐する仕事がメインになると思います。

例えば、秘書、総務アシスタント、通訳(日英)です。いづれの場合も、ある程度の英語力は必須です。

 

ニムラナの食事事情

食事は重要項目ですね。

 

<ランチ>

インドカレーが好きな人の場合、会社のキャンティーン(社員食堂)で毎日カレーが2~3種類食べ放題です。副菜には主に玉ねぎのスライスやキュウリの輪切りがついています。

それ以外は、以下のオプションがメインになります。(2019年12月現在の状況です)

  • 自前のお弁当を持参する。
  • 日本食のお弁当を注文して配達してもらう。
  • 日本食のレストランに行く。(ランチタイム中に日本食が食べられるところは、4件はあります。)
  • ニムラナ内にあるフードコートを利用、もしくは配達してもらう。(Wendy’s, Domino’s Piza, 南インド料理屋さんなどの店舗が入っています。)

 

日本食が食べられる場所は、「愛味」(日本人用レジデンス兼ホテル”Sunrise”内)、「くふ楽」(日本人用レジデンスHirohama内)、「小町」(日本人用レジデンス兼ホテル“小町”内)、Aju Palace Hotelの6階の「富士山」になります。

 

値段ですが、お弁当だと約400~500ルピー、日本食のレストランだと600ルピー前後、フードコートはだいたい200~400ルピーが相場です。

 

<ディナー>

自炊が中心になると思います。

では、どうやって食材を調達するのか、リストアップします。

 

  • アパートの敷地内にある、小さな八百屋さんまがいのお店で調達。種類は少なく、鮮度も落ちます。
  • ニムラナマーケットで調達。(私はやったことがありません。)
  • 週末に、グルガオンのモールで買い出しをする。(←定番パターン)
  • Hasoraさんの有機野菜を週一でニムラナのSunriseにデリバリーしてもらう。(お値段は高めですが、安心のクオリティーです。)

 

グルガオンのモールでは、日本の調味料や食材も豊富ですが、割高です。

現地採用のお給料レベルだと、ホイホイかごに入れるのはためらわれます。

  

 ニムラナのエンタメ

日本人女子が楽しめる施設は皆無です。

駐在員男性が楽しめるところはあります。

カラオケバーがメインにはなりますが、料金も超高く、アジア系のルックスのインド人女性に囲まれても、私たち女子は嬉しくないのでここは割愛です。

 

週末はどうする?

グルガオンへ行く!が鉄板です。

理由は、先ほどの食糧の買い出しだったり、モールでのショッピングだったり、映画を観たり、贅沢ランチをしたり…

 

とは言え、片道の移動が1時間40分くらいになるので、毎週行くのは疲れます。

私の場合は、平均すると月に2回(多いときには3回)ほど行っています。

ちなみに、社有車を使っての移動になるので、あらかじめ会社で手配が必要です。

 

ニムラナでの生活費は?

支払いが発生するのは、家賃、管理費、光熱費、食費、インターネット使用料、その他(衣類、旅費、グルガオンでの支出など)がメインになるかと思います。自分が実際に払っていた金額は以下になります。

 

家賃・管理費                    約20,500ルピー (注:最初の10カ月は自分で払い、その後会社が負担してくれました)

光熱費(=電気代 )        約1,500~5,000ルピー(エアコンを多く使う夏は多め)

食費                                約9,000ルピー(個人差がでる項目なので、あくまでも参考程度です。)

 

衣類・旅費・グルガオンでの出費については、月によって変動するので省略しました。

インターネットは最初は高額な料金をアパート経由で払っていたのですが、最終的にはJioと契約したことで、毎月200ルピーくらいで使用できるようになりました。

又、ご参考までに、インド国内移動に飛行機やタクシーを使ったり、まともなホテルに泊まると、2,3泊の旅行でも、普通に数万ルピーは飛んでいきます。

 

上記以外に発生する費用として、

―日本への帰国費用、

―インド滞在中の海外保険

は、毎月発生しませんが、支出の中でも大きな金額になるので、要注意です。

 

ニムラナでの典型的な一日

<平日編>

アパートから会社へ社有車で移動(所要時間:7~8分)

08:00~17:00 会社で仕事

(ランチは自前のお弁当を会議室で食べる。)

仕事が終わったら、社有車でアパートまで移動

夕食&自由時間

就寝

 

ニムラナでの移動は毎回車になります。

また、会社からアパートまでには、特に立ち寄るような場所はなく、毎回このような単純なパターンになります。

とは言え、時々会社の人たちと一緒に、日本食屋さんで夕飯をいただくこともあります。(特に日本からの出張者が滞在しているときなど)

 

こんな感じで月曜日から土曜日を過ごします。

 

<日曜日編>

週休一日の場合、お掃除、食料の買い出し、その他家事を集中してかたずけることになります。日本での週休二日制に慣れていると、ここで休日の物足りなさを感じることになります。

 

食料の買い出しやその他ショッピング、食事等には、通常グルガオン、もしくはデリーまで行くことになります。こちらも社有車での移動です。グルガオンまでの所要時間は1時間40分くらい、デリーへは約2時間必要です。(注:社有車ではなくタクシーを手配して移動している人もいます。)

 

ですから、グルガオンのショッピングモールに行くと、ほぼ一日がこれにつぶれてしまします。ただ、グルガオンはインドでは大都市で、洗練されたモールもあるため、平日の田舎暮らしのストレス発散効果は大です。

 

こんな一週間を一年も繰り返していくと、だいたい生活のリズムに慣れてくるはずです。

 

ぶっちゃけ、女性がニムラナで働くのってどうよ

冒頭のイントロでも書きましたが、この疑問に答えるのは個人の好みによるところが大きいです。ただし、外的要因として以下の3つの条件が揃っていた場合、ニムラナで働くハードルは劇的に低くなるはずです。

 

  • 会社の日本人駐在員と相性があう。
  • アパートが快適で、治安も良い。
  • 社有車を利用しやすい。

 

裏を返せば、1つでも欠けると、ストレスが溜まりやすく、長期滞在はきついでしょう。しかも、これら3つを事前に確認することは簡単ではありません。(特に1は。)

そんなわけで、ニムラナで働くことは一種の賭けにも似ているかもしれません。

 

ニムラナで働いてよかったこと

とても個人的な感想になるのですが、思いつくまま箇条書きにリストアップしてみました。

 

―日本の通勤のストレスから解放されて、Door to doorが10分未満の車での移動がとても楽だった。

ー日本人上司に恵まれていた。(これは最高にラッキーなことでした。)

―基本残業がなかったので、平日は早くアパートに帰宅できた。

―野生動物に興味があったため、牛・やぎ・ラクダなどの動物に囲まれた生活は面白かった。

―未経験の製造業の仕事に挑戦できたのが良い経験になった。

 

ニムラナ生活の悩みどころ 

こちらも思いつくままリストにしてみました。また、これらの悩みを少しでも軽減できる対策案も付け加えました。これらのリストにある項目が気にならない方は、問題なくニムラナで生活できる可能性が高いです。

 

大気汚染が酷い

デリーやグルガオンほどではないにしても、ニムラナも相当大気汚染の影響を受けています。ただし、一年中というわけではなく、10月後半あたりから顕著になり11月にピークを迎え、徐々にましになっていく、という感じです。

 

<対策>

・外出を控え、空気清浄器をアパートに設置するくらいでしょうか。

 

移動が不便

ニムラナからの移動は、日本人であればバスなどの公共機関は利用しないで社有車かタクシーに頼ることになると思います。(治安面での不安もありますが、走っているバスを見て乗りたいという気持ちにはなったことはありませんでした。)

そして普通は社有車の数は限られています。いくら会社の人たちが親切だったとしても、週末に遠慮なく社有車を使用するのにはちょっと勇気が要ります。会社の中には利用できる数が月に2回などと制限されているところもあるようです。

また、タクシーは有料なので、できれば使いたくないかと思います。

私の場合は、平均して一か月に2回(多い月は3回)ほど日曜日にグルガオンのモールへ買い出しに行っていました。それ以外はずっとニムラナのアパートで暮らしていました。

 

<対策>

・外出が減る分支出が抑えられるので貯金に回す。ある程度ためたら大型休暇シーズンに旅行する。

・アパートで過ごす時間を有意義に使い、次のキャリアアップの準備期間だと割り切る。(例:資格試験の勉強に集中する、ブロブを開設して情報発信をしてみる、ネットで副業に挑戦してみる、などなど) 

 

外食する場所が限定されている

日本人が安心して外食できる場所は日本食のお店4件くらいでしょうか。それ以外は最近オープンしたフードコートにWendy’sやDomino’s Pizaなどのファーストフード店が数店舗あります。どちらにせよ、社有車で行くしかなく、しかも日本食屋さんは現地採用のお給料では頻繁に行ける値段設定ではありません。日曜日にちょっとカフェでくつろごうと思っても、そんなカフェもなければ足もない。(笑)

そんな外食環境ですから、普段はニムラナのアパートで自炊をして、たまにグルガオンの大都市に行っておいしいものを食べて帰る、というのがせめてもの贅沢コースの典型です。(その点、自炊が得意な方は食材さえ確保すれば悠々自適な食生活が可能です。)

 

<対策>

・自炊が苦手な人は、これを機会に料理に挑戦してみる。

・しかもせっかくなのでインド料理に挑戦してみる。

 

あまりにもへき地な環境

ニムラナの景観はお世辞にも良いとはいえません。通勤途中で目にするのは、日系の工場が立ち並ぶ殺風景な工業団地のほかは、いかにも痩せた土地に牛やヤギたちが群れをなして行き来するシーン。村の人々の生活レベルは概して低く、毎日車から眺めていると気の毒になって憂鬱な気分になるかもしれません。

 

<対策>

・日本での通勤地獄を思い出して、社有車通勤できる幸運を毎日実感するようにする。

 

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ニムラナでよく見かける牛

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ヤギの群れ

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ラクダの群れ

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牛の群れ

 

工業団地は作業着ルック

製造業で作業服を着て仕事をすることに抵抗を感じる女性は少なくないと思います。安全帽に安全靴など、今までオフィスで事務系の仕事をしてきた人であれば、多少の違和感があると思います。

私は最初かなり抵抗がありました。そのうち慣れるものかと思っていましたが、最後までなじめませんでした。(笑)

 

<対策>

・あきらめるしかありません。もしくは、ローカルスタッフのように、制服を自分に完全フィットするようにニムラナの仕立て屋さんで手直ししてもらうことも可能です。私は、毎日何を着ていくのか考える必要がなくなってよかった、と言い聞かせていました。

 

会社とアパートの往復が生活の基本形なので、会社での人間関係がうまくいかない場合、不幸へまっしぐら

帰宅途中でストレスを発散させるような手段(例えば、映画館、友人とのおしゃべり、行きつけの店での食事など)がないのでなんでも一人でかかえてしまう環境に陥りがち。もちろん、現地でインド人の友人や彼を作ってニムラナになじむことは可能ですし、そうした場合はここにあげたリストはあまり気にならないかも。ただ私の場合、日曜日しかお休みがなかったので、一日のうち午前中は掃除洗濯、午後はアパートでのんびりすることにしていて、仕事を離れてインド人の友達を積極的に作る余力はあまりありませんでした。むしろ、平日にインド人文化にどっぷり浸かっていたので、日曜日くらいは離れていたいという気持ちもありました。

 

<対策>

・ニムラナの現地採用の友達を作って食事をしたり、おしゃべりでストレス発散。

 

最後に

ニムラナのことをほとんど知らないまま日本からやってきて、1年と7カ月滞在してみて感じたことをまとめてみました。

情報不足が原因で一か八かでニムラナにやってきて後から後悔することを避けるために、この体験談が少しでもお役に立てば幸いです。

 

追記:最近(2020年2月)では近い将来ニムラナにモールが建設できるとの情報もあり、ニムラナがへき地でなくなる日も来るのかもしれません。